前回『陰鬱なる凱旋』τ「…どういうこと?」
Dr「だから、地球破壊を企てたのは一部の過激思想の団体で、連中の中央政府は今回の件には関与していないと主張している。首謀者は拘束して無条件でこっちに引き渡す用意があるそうだ…」
τ「…認めたのね」
Dr「まあ、そういうワケだが…いや、ちょっと待て!」
τ「シグマ…やれる?」
σ「場所さえわかれば事足りる…気はすすまぬがの」
σ「スペースビーム・ジ・エンド…」
シグマの光の鎌が空間を斬り裂き敵の母星への道を開いた。
σ「ふん…ぅ!」
振り向きざま光の剣で自らを貫くシグマ。身体を突き抜けた剣は空間を越えて飛んでいく。
σ「くうぅっ!…慣れぬ…う…星の…死の…痛み…ああう!」
τ「大丈夫、もうこれ以上苦しむ必要は無いわ」
τ「与えるものですか、貴女が苦しむ時間も、奴らに逃げる隙も!」
σ「ひぐぅっ!」
タウはエネルギーの臨界を待つことなく、ビームフェザーでシグマを爆殺した。
Dr「…じ、時差修正観測!目標…」
隊員「やってます。モニター出ます」
隊員「惑星の消滅を…確認しました…」
Dr「ほ、本っ当にやりやがった…と、とにかくだ、記録は厳重に保管。発表は…自然災害の可能性、とでもするしか」
τ「その必要は無いわ。同盟、交流、交戦問わず過去に地球と接触のある惑星全てに公表なさい」
Dr「いや、しかしこれはさすがに…」
τ「ベルフェ…そんなことより進行状況を報告して。そろそろ使えるはず、だよね」
Dr「あ…いや、たしかに90%ぐらいはクリアしている段階なワケだが、まだ実用には…少し」
τ「結構たつよね…手を結んでから」
Dr「は…」
τ「もしも、お前と出会わなかったら私、何もできなかった…とでも思ってる?」
Dr「わ…わかった。すぐに最終テストを行うから。その…許可を頂きたい…」
φ「どぉかしらぁ~気分?」
γ「あ、ファイさん、ありがとうございます。おかげでだいぶ痛み引いてきました」
φ「お礼はいいわよ。私は自己治癒のやり方教えてあげただけだからねえ」
β「こんなに早く傷を治せるんだな…エネルギー消費の少ない等身大に戻って安静にしてるしかないと思ってた」
φ「それじゃよけい治りが遅くなるわよぉ、治癒に使えるスペースビームエネルギーのケタが違うでしょ。もっとも、長い時間無防備な状態でいても大丈夫な場所がないと使えないけどねえ…どう、あんたたち、せっかくだしこの機会に…」
『スペースベータ様、ガンマ様、ミュー様、至急中央広間にお越しください…』
β「何だ?」
μ「デパートの呼び出しかいな」
τ「スペースプシィ、イプシロンは戦死。デルタは一命を取り留めたものの予断を許さない状態…」
τ「おなじく重傷を負ったニューは見ての通り順調に回復中…でも戦闘はまだ無理だけどね」
β「…パイは?」
τ「イオタが捜索に向かったわ。防衛隊も警戒を続けているけど、依然行方不明。もっとも…もし見つかったとしても、もう貴女一人の責任でどうこうできる問題じゃないから。わかるよね」
β「ぅ…」
τ「まぁ、手放しでは喜べない結果だけど地球の危機を救うことができたのも、貴女達が少なからず貢献してくれたのも事実。それに今回の貴女達の戦いは各方面から高く評価されているわ。そこで提案だけど…この機会にお互い過去の確執は捨てて、正義を守るために正式に手を結ぶべきだよね。貴女達さえ良ければこのスペースガード・フォートレスに迎え入れる用意があるわ」
θ「まぁ…待遇によりますわね」
ζ「お嬢!」
τ「貴女たちは、どう?」
β「…」
γ「…質問、いいですか?」
τ「?」
γ「ニューさん、あなた何故ここにいるんですか」
τ「ああ、これはね…」
γ「私はニューさんに質問しているんです。」
γ「ユプサイランさんの仇討ちは…それに、クシィさんはどうしたんですか。答えてください」
ν「…クシ?」
γ「わかりませんか、あなたは記憶を消されたんです、その羽根で」
τ「…要するに、私と組むのは嫌ってこと、だよね」
γ「あなたが…スペースタウ…さんたちが地球を守ってくれていることは事実ですし、あなたの正義を守るという言葉にも偽りはないと信じています。でも…」
γ「人の記憶は…生きた証です。それを消すことは一人の人間の存在を否定すること…それをしたあなたを、正義とは…私は、呼べません…認めたくありません」
β「…ガンマ」
γ「ぁ!す、すみませ…」
β「ふ、あははっ!お前、やっぱり最高だよ!あはははっ!」
γ「ひゃうっ!ちょっ、べ、ベータさん?」
β「俺は…あんまり頭よくないし、ケンカには自信あるつもりだったけど…スペースシスターズでも全然ダメな方みたいだし…正直、リーダーとかそういうの務まるレベルじゃないって思い知らされた。特に今回は…だから」
τ「だから?」
β「だからガンマ、今日から俺のボスはお前だ!」
γ「え?! ちょっと、ベータさん?」
τ「はぁ?」
β「これから俺はお前の決めたことに従う。お前の嫌がることはしない。お前のやりたいことを手伝う、それに…」
β「俺はお前を守る。何があっても、誰が相手でも…絶対、守ってやる。ずっとだ」
μ「あ、ちょっと待ってぇな、何勝手に帰っとんねん」
θ「はぁ…フリーダムにも程がありますわ。とりあえずここはお互い一心太助ということでよろしいかしら…」
ζ「お嬢、一歩前進…でいいの?」
θ「また何かありましたら、力を貸してさしあげてもよろしくてよ。では、ごめんあそばせ」
μ「…ま、まあ心配いらんと思うで、みんな何やかんやいうてやらなあかんことはわかってるから…多分」
τ「…」
ベータ達は去り、タウとニューだけが残された。
φ「随分と嫌われたもんねぇ~」
τ「ファイ…」
φ「あのコたちだってやらなきゃいけない時はやると思うわよ。でもねぇ、私たちと違って好きでスペースシスターズになったわけじゃないんでしょ、考えてやりなさいよ」
τ「だからって、いつまでも勝手にさせとくわけにはいかないよね」
φ「はぁ…あいかわらずねぇ。プシィが死んで不安なのはわかるけど、焦ってもろくなことにならないわよ。じゃ、とりあえず私は戻るわね…どうもここは落ち着けないわぁ」
τ「どうして…皆」
φ「あんたこそ過去に縛られすぎじゃないの。もう何したってマスターはほめてくれないのよ」
τ「…だよね」
スペースファイが以前より拠点としているとある無人島。ここでファイは退治した怪獣の一部を集め気ままに飼育していた。スペースタウを通じて防衛隊との協力関係を築いてからは正式に純地球産怪獣の保護区として認められ人類に危害が及ばないように隔離、監視を続けながら生態の研究が行われている。
φ「ん?何かイヤな臭いがするね…」
φ「なっ!」
島の怪獣たちは残らず惨殺されていた。そして無残な死体の山の向こうには…
φ「見かけない顔だね、あんたの仕業かい?」
『やっと来たか…助かったよ、そいつらでは弱すぎてデータも採れず困っていたところでなぁ』
φ「スペースビーム・テンタクル!」
『て、いきなりかっ!名前くらい聞いたらどうだ?』
φ「聞かないよ…二度と思い出す気はないからね!」
φ「消えた…幻?」
『ご名答!』
『はぁっ!』
φ「ちっ!スペースビーム・テンタクル!」
『ぐっ!く…』
φ「今度は本体みたいだねぇ…不覚をとったわよ、さっきの光は何だい?」
『ふ…くく…』
『心配するな、あの光は無害だ、浴びても何もおこらない』
『お前の身体にはなぁ!』
φ「何?」
『はーっはっはっは!』
φ「色が変わった?」
『ここで驚いてもらっては困る、本番は次だからなぁ!』
『スペースビーム・テンタクル!』
φ「なっ?!」
φ「くっ!」
『ふふっ…どうやら説明が必要なようだなあ』
φ「ふん…さっきの光で相手の能力をコピーできるってことかい…さしずめスペースビーム・パクリってところね」
『す、スペースビーム・スキャナーだ、馬鹿にするな!とにかくお前の技は頂いた。自分の技でやられる気分はどうだあ?』
φ「言うわねぇ…でも締め付けが甘いわ、付け焼刃じゃ使いこなせないわよぉ」
ファイが反撃に出ようとした次の瞬間…
φ「かはぅっ?!」
φ「ひっ…いぃあああああぁー」
φ「あ…ひう」
『ふっ、ふははは…失敬。たしかにお前の言うとおり、私がこれを使いこなすには練習が必要だからなぁ、お前を練習台にさせてもらうとしよう』
φ「ぐふっ!ふざけるんじゃ…な…ひう!」
『程度の差こそあれスペースビーム・エネルギーの技の発動には精神集中が必要、つまり精神を乱してやれば容易に封じ込められる…』
『お前の技はまさに攻略にうってつけというワケだぁ!』
φ「ひっ!」
φ「ちぃっ…甘くみてたよ…ひう!」
『くくっ…無理をするな。スペースシスターズだろうと元は人間の女。生物である以上本能的な欲求からは逃れられない。特に生殖本能が欲する性的快感というやつにはな…さて、そろそろ欲しくなってきたんじゃないかね…』
φ「な…まさか…やめ…」
φ「ひ…ぎひぃ!」
φ「ひっ!いっ!あ…あはぁああああああぁーっ!」
『はーっはっはっは!いい声で鳴くじゃないかこのメス豚がぁーっ!』
φ「い…やえ…あっ!あ…いぐ…い…いあああああぁー!」
φ「ぁ…」
『…ふん、性的刺激に対する反応及び絶頂までのプロセスは一般的な人間と大差なしか…予測通りだがつまらん結論だ』
φ「く…ぁ…あんまり…調子に乗るんじゃ」
φ「無いよおおおォーッ!」
『ひっ?!』
『…ん』
『ふ…ははっ、なんとか、間に合ったようだな…はぁ…』
φ「…ん」
φ「ぐ…はあぁ!」
大量の吐血とともに倒れるファイ
『くく…何が起きたか理解できんだろう』
φ「ひう…あ…あら…あたまが…ぅ」
『スペースビームテンタクルとは要するにスペースビームエネルギーでコーティングした髪の毛を操る技、その利点と欠点を利用させてもらったワケだ』
『原理はイプシロンのビームクローに似ているが媒体が髪の毛だけに太さも長さも伸縮自在、本数も無限に近く遠隔操作も可能と良いこと尽くめである反面、複雑な操作にはかなりの集中力が必要となる…』
『…だから、鼻腔から侵入しお前の脳髄そのものを損傷させてもらった、というワケだ』
φ「な…ん…ぁあふ…ぐ」
『っと、失敬。もう説明を理解できる状態では無くなったようだなあ。では…』
『もう少し性能テストを続けさせてもらおう』
φ「ひぎゃぅ!」
φ「ひっ!いぎいっ!」
『ふん、遠隔操作でも骨を砕く程度の力はあるようだな…だがそれなりに精神の疲労を伴う』
『最後に…髪が抜けていない状態で使えば飛躍的に威力が増す、ということだが…試してみるか』
φ「い…いあ…」
φ「ひぅ!」
φ「いぎゃぁああああああーっ!ひいっ!ひ!ひげあああああー」
『ふ…はは!これは凄い、凄いぞ!』
φ「あひぃ!あ…ぐあ…ら…ひふぃ!」
『触覚で内臓の位置関係が手に取るように解る…つまり』
『体内に分散するスペースビームエネルギーの生成器官を難なく破壊出来るというワケだなあ!』
φ「ぴいあーっ!ひぎいっ!ひぐ!う…びあああーっ」
『ふふ…実に、実に有意義な実験だった、これで計画は実行に向け大きく前進した』
『以上で、最終テストを終了する。ご協力に感謝する…死ね、肉ダルマ』
φ「ひっ!」
φ「いぇぁああああああああああーっ!」
『ふっ…』
『簡易装具!』
<声紋認識:了解>
ファイを倒した戦士の正体は、ドクトル・ベルフェだった。
Dr「…実験成功、というワケだ」
Dr「!?」
φ「…は…どこかで聞…ぃた声だと思った…らぁ…タウのとこのネ…ネズミだね…ひぅ…ナメたマネ…してくれんじゃ…」
Dr「ひいっ!ま…待ってくれ!これは…」
φ「待…待たないよ…い…生かす気はぁー無いからねえ!」
Dr「いっ!違!命令されて…あ!ああーっ!」
Dr「ひゃあう!」
ベルフェを握りつぶそうとしていたファイの左腕が突然上空から攻撃され吹き飛んだ
φ「…タ…ゥ」
τ「予想外、だよね…まさか貴女が負けるなんて」
φ「あん…たの…差し金…かぃ」
τ「でも、これではっきりした。過去は捨てるわ、貴女の言うとおり」
φ「何を…たく…らんで」
τ「何をしても、もうマスターは誉めてくれない…か。そんなことわかってる…わかってるけど、聞きたくなかった」
φ「ぅ?」
τ「結局、過去にこだわってたのは私だけ。マスターが死んだことを認めたくなかっただけ。命令を実行すればマスターは戻ってくると、誉めてもらえると勝手に思い込んでいただけ…でも、それは幻。プシィが教えてくれた。だから…」
τ「だから私が、マスターになる」
φ「な!」
τ「マスターは宇宙の正義と平和を司る。そして目指すものは永遠なる平和。だから私は新たな正義と秩序を作り上げるの。この地球を中心に、そしていずれ、全宇宙を征服する」
φ「ふざ…けんじゃ…な…」
τ「新たな計画は既に発動した。障害になるものは早急に排除する」
φ「!」
τ「死ね、肉ダルマ」
『無人2号機・西方半径3キロ・生命反応なし』
『了解、引き続き南方5キロ範囲で捜索せよ』
『こちら有人3号機、火山活動の痕跡なし。全て外部からの攻撃と推測されます』
『イオタ隊長、まだ本部との連絡とれません。現在まで野生怪獣14種92体の死体を発見、生存者は未確認です』
『…スペースパイの仕業でしょうか?』
ι「違う…」
『は?』
ι「こんなの…正義じゃない」
β「風呂空いたぞ、入るか?」
γ「ベータさん…人間の姿だったころのこと、憶えていますか」
β「あ?…あぁ、まあ一応」
γ「私は…憶えてません」
β「…?」
γ「自分が、なんて名前で、どこで生まれてどんな風に育ってきたか…知識としては残ってるんです。でも、それが自分のことだって実感が…無いんです。どうしても、今の自分とつながらないんです」
β「ガンマ…」
γ「多分、スペースシスターズとして覚醒するってそういうことなんだと思います…人間じゃなくなるんですね、身体も…心も」
γ「ねえベータさん、宇宙、行きませんか?」
β「え?」
γ「ほら、もう人間じゃないなら、無理して地球に住むことないと思うんですよ。月だって平気だったし、もっと遠くだって…そうだ、ラムダさんの行った星、探して行きませんか。きっとびっくりしますよ…」
β「おい、何言ってるんだよ」
β「…おい?」
γ「私…怖いんです。プシィさんも…イプシロンさんも…あんなに強かったのに…いつか、アルファさんや、オメガ様みたいに…嫌…そんなの嫌なんです!」
β「ガンマ…わかってる、大丈夫、俺が」
γ「わかってません…違うんです、私じゃないんです…私なんかじゃ…私…私、もうベータさんが傷つくのを見るの嫌なんです!私、もう地球とか正義とかどうでもいいんです!ベータさんとずっと一緒にいたい…ベータさんに生きててほしい、ベータさんだけでいい…別れたくない、別れたくないんです!」
β「…」
μ「…潮時やな」
〈次回に続く〉
- 2011/10/10(月) 17:39:58|
- スペースシスターズ
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Thank you for Ms.Pira and the comment.
As for me, it is very glad that you are continuing reading my work.
I forgot to attach a translation to this chapter. I'm sorry.
I think that I will translate it in a few days.
Dr. Belphe got capability equivalent to Space Sisters.
Therefore, she will become a role which greatly troubles them from now on.
Even if it spends long time, I certainly complete a work to the last chapter.
Please enjoy each fate of Space Sisters to the last.
- 2012/04/15(日) 19:15:10 |
- URL |
- MFJ #MSsD658o
- [ 編集 ]
Thank you for Ms.Pira and the comment.
I'm sorry.
Since I neglected translation, you had to have long time for reading this story.
I am advancing translation of this story now.
I will be able to add English texts in a few days.
By the way, you noticeed her cameo appearance.
Since I obtained the Poser Figure of Miku Hatsune by the free staff before, I put her into extra actor.
I am a fan of Miku Hatsune and Vocaloids.
- 2012/04/17(火) 22:52:57 |
- URL |
- MFJ #MSsD658o
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